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特集 内因性精神疾患の死後脳研究
精神疾患死後脳研究の展望とブレインバンク
Perspectives on Postmortem Brain Studies and Brain Bankings of Psychiatric Diseases in Japan
富田 博秋
1,2
Hiroaki TOMITA
1,2
1東北大学大学院医学系研究科精神・神経生物学分野
2日本生物学的精神医学会ブレインバンク設立委員会
1Department of Biological Psychiatry:Tohoku University Graduate School of Medicine, Sendai, Japan
2Japanese Society of Biological Psychiatry, Task Force for Establishment of Psychiatric Brain Bank
キーワード:
Postmortem brain study
,
Brain bank
,
Psychiatric disease
,
Confounding factor
,
Agonal state
Keyword:
Postmortem brain study
,
Brain bank
,
Psychiatric disease
,
Confounding factor
,
Agonal state
pp.367-376
発行日 2010年4月15日
Published Date 2010/4/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1405101606
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はじめに
近年の画像研究・死後脳研究から統合失調症・気分障害などの精神疾患に神経細胞やグリア細胞における分子遺伝学的変化を伴う何らかの変性とそれに伴う脳構造の変化を示唆する所見が集積されてきている。精神疾患の成因に関連する脳内細胞の形態・機能変化や分子遺伝学的なメカニズムについては今後,究明が進むことが望まれるところである。従来の組織病理学的アプローチに加え,近年,一度に多数の遺伝子転写物,タンパク質,代謝物の発現量・含有量や分子遺伝学的性状を網羅的に解析するハイスループット解析技術が急速な進歩を遂げてきており,これらの技術を用いて,精神疾患罹患者と健常対象者の死後脳を解析し相違を検討することで,精神疾患の病態に関連する分子遺伝学的現象を特定できる可能性が広がってきた。欧米では精神疾患を対象とするブレインバンクがすでに多数運営され,死後脳の集積が行われてきていることから,今後,新技術を駆使した研究がますます盛んになると考えられるのに対して,本邦ではブレインバンクの整備が大幅に遅れている4,5,7,9,13)。このような背景から日本生物学的精神医学会の中にブレインバンク設立委員会が結成され,より多くの日本の施設でブレインバンクを設立・拡充させ,また,互いに有効に連携できる体制の整備に着手している(図1)。本稿では,本邦におけるブレインバンクのシステムのあり方に関して本委員会で議論されている案件を中心に,今後の死後脳研究とブレインバンクの展望についての検討を行いたい。
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