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はじめに
統合失調症は,症候論として現在1つにまとめられているが,その生物学的基盤を明らかにしようとした場合,今のままの概念規程で成功するかどうか不明である。逆に,生物学的研究から症候論を整理しようとしても,これまでの研究の成果蓄積速度からすると,道はたいへん険しく感じられる。20世紀の間には解決できなかったコモン疾患の責任ゲノム部位が,今世紀になって徐々に明らかになってきている(しかし機能的因果関係は多くの場合なお不明)19)。それに比べて,統合失調症(あるいは精神疾患全般)に関しては依然五里霧中の状態である。統合失調症の成因・病態解明研究の困難さの理由として,①他のコモン疾患と同様多因子であるが,「多因子」の程度が違う,②診断が客観的パラメーターでなく,主観的陳述に大きく依拠している,などが考えられる。しかし,遺伝子が形質に関する大量の情報を担っていることは精神疾患の場合もあてはまるであろう。②の点にアプローチすべく,近年エンドフェノタイプまたは中間表現型という概念が歴史の中から掘り起こされ6),多少の流行になっている。これは,臨床症状と原因遺伝子の「中間」に客観的に測定可能な表現型を想定し,そのような表現型を研究対象とすることで異種性の程度を減らし,責任遺伝子との関連を検出しやすくしようとする試みである(図1)。統合失調症に関しても,心理学的所見,生理学的所見,脳画像所見などが候補に上がっているが7),中間表現型の概念に完璧に合致するものはない。さらには,各中間表現型の候補がどの程度DSM-IVの統合失調症と重なりがあるのかという根本的問題もはらんでいる。
とはいうものの,統合失調症の生物学的成因解明にはあらゆる方面からの努力が必要であるという観点から,我々は中間表現型の1つを取り上げ,その遺伝的基盤を探った。検討した中間表現型は,実験動物であるマウスでも測定可能であるものが解析に有利であると考え,プレパルス抑制を選択した。
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