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はじめに
わが国ではリスペリドンに始まりクエチアピン,オランザピン,ペロスピロンといった新しい抗精神病薬が臨床に供せられるようになり,精神分裂病の薬物療法の選択の幅を広げている。ハロペリドールなどの定型抗精神病薬の限界が指摘されて久しいなかで,ユニークな薬理作用を持つ有効な治療薬が登場したことは精神医療の向上に大きく貢献することは疑いない。こうした新規抗精神病薬は一括して非定型抗精神病薬と呼ぼれ,共通して,パーキンソン症候群と遅発性ジスキネジアを引き起こさない,陰性症状の改善効果が望める,血漿プロラクチン値への影響がごく軽度であるなどの特徴を有している。非定型抗精神病薬の概念がこうした定義に基づいているため,それは薬理特性的に幅のある一連の薬物群の総称になっている。すなわちD2受容体と5-HT2A受容体に対し高い親和性を持つserotonin dopamine antagonist(SDA)と呼ばれる薬物がそのひとつで,すでに国内外で使用されているリスペリドン,2001年になって発売されたペロスピロンがこれに含まれる。一方,多数の神経伝達物質受容体に親和性を持つmulti-acting-receptor targeted-antipsychotic(MARTA)と呼ばれる薬物は治療抵抗性の症例に卓越した効果を持つクロザピンをそのプロトタイプとしている。周知のようにクロザピンが顆粒球減少症を引き起こすために少なくともわが国では開発が断念された経緯があるが,クロザピン類似薬物の開発の流れに属するものがクエチアピン,オランザピンである。こういった非定型抗精神病薬の薬理特性に関して一定の基礎的事項について知識を得ておくことは,これらを使いこなすためにぜひ必要である。そのため非定型抗精神病薬に共通した薬理特性についてD2受容体と5-HT2A受容体占有に関する成績,FOS免疫活性の誘導,prepulse inhibitionの減弱の回復,慢性投与後のドパミンニューロンの電気生理学的特性などを中心にクロザピンを例に概説し,次いでクエチアピン,オランザピン,ペロスピロンについて述べる。
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