書評
―山崎晃資 編著―少年事件―おとなは何ができるか
飯森 眞喜雄
1
1東京医科大学精神医学講座
pp.97
発行日 2009年1月15日
Published Date 2009/1/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1405101356
- フリーアクセス
- 文献概要
- 1ページ目
日常臨床において,たいていの精神科医は「少年」と聞くと腰が引けるだろう。「事件」だと逃げ出したくなる。できたら避けたいし,診ないですませたい。「少年」も「事件」も得体が知れないからだ。ましてやオジサン精神科医には理解できないことばかりである。今の少年たちがどんな息遣いをし,何を感じているのかが肌身にピンとこないのだ。なんとか共感しようにも,その足がかりとなる自分の少年時代のこころは彼方にある。だから近寄りがたい。いかに把握し,どう対応し,どのように治療していったらいいか見当がつかないのだ。精神科医は自分が生きている時代の空気から逃れることができないが,さりとて変質する空気に合わせて呼吸法を変えていくのも難しい。
さて,そこで『少年事件』である。「少年」に加えて「事件」までくっついている。評者も本書を開くまでは気が重かった。だが,読み終えた後は一変してしまった。題名はセンセーショナルで氾濫するマスコミ本のようでもあるが,中身は濃い。ところが,読後はこころの持ちようが軽くなるのである。そして,「さぁ,今度の休みには渋谷の街にでも出かけてみようか」という気を起こさせてくれる。
Copyright © 2009, Igaku-Shoin Ltd. All rights reserved.