オピニオン・医療観察法の見直しに向けて
なぜ医療観察法は廃止しなければならないか
伊藤 哲寛
1
1北海道立緑が丘病院
pp.1062-1066
発行日 2008年11月15日
Published Date 2008/11/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1405101313
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はじめに
「心神喪失等の状態で重大な他害行為を行った者の医療及び観察等に関する法律」(以下,医療観察法)が動き出して3年を経過した。2年後の2010年には見直しが予定されている。
医療観察法は,保安的要素を内に秘めつつ,表向きは医療と社会復帰の促進を謳うという二重構造を持ち,その運用も入退院の決定を司法が担い,医療と社会復帰の責任は医療が担うという司法モデルと医療モデルの折衷的性格に特徴がある。その多義的性格ゆえに,保安処分制度導入を積極的に進めてきた立場からも,保安処分制度に反対してきた立場からも,さまざまな問題が指摘されている。施行後5年の見直しに向けて今後ますます論議が活発になると思われる。
筆者は,臨床の現場の精神科医として,この法律は廃止すべきだと考えている。本稿では,法制定までの背景,この法律の基本的性格,施行以後の状況,予想される見直しの方向などについて述べ,廃止の論拠を示すことにする。なお,医療観察法には「強制隔離の法的根拠」「適正手続き問題」など法律学的に吟味されなければならない疑義もあるが,ここでは触れない。
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