オピニオン・医療観察法の見直しに向けて
国立精神・神経センター司法精神医学研究部の立場から
吉川 和男
1
1国立精神・神経センター精神保健研究所司法精神医学研究部
pp.1059-1061
発行日 2008年11月15日
Published Date 2008/11/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1405101312
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はじめに
医療観察法制度は,2001年6月8日,大阪で発生した池田小学校児童殺傷事件を契機に国会で審議が開始され,2003年7月16日に公布,2005年7月15日より施行というかなり短期間のうちに誕生した制度である。このように短期間での公布・施行を優先したため,関連法規である刑法,刑事訴訟法には,全く手は加えられず,精神保健福祉法についてもわずかな修正がされたに過ぎず,結局,医療観察法はこれらの関連法規からは完全に独立した第3の法規定として誕生した。このことから,法手続上かなり複雑な問題が生じている。また,同様な時間的制約から,医療観察法が目指す方向性も十分確認されないまま予算が組まれてしまったため,現在,病床不足という深刻な問題も生じている。さらに,わが国の精神保健医療が慢性的に抱えている地域精神医療の欠陥も,この制度で大きく露呈されることとなった。本稿では,医療観察法で見直すべき点で最も本質的な問題を列挙し,その具体策についても提起したい。
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