書評
乳幼児精神保健ケースブック―フライバーグの育児支援治療プログラム
吉田 敬子
1
1九州大学病院精神科神経科
pp.409
発行日 2008年4月15日
Published Date 2008/4/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1405101198
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本書は,妊産婦と3歳以下の子どもを育児中の母親と家族に対する援助のための治療の理念と実際を豊富な事例により紹介している。本書で紹介されている治療プログラムは,ミシガン州でSelma Freibergとその同僚たちによって考案され,幼い子どもを養育中の親に対し,初期の養育のサポート,愛着関係の発達の強化,子どもの発育不全に対する留意,親による虐待やネグレクトなどリスクの軽減といったことを目的としている。そのため乳幼児精神保健のスペシャリストの専門性の内訳は,心理学,児童福祉,幼児教育,小児科,精神科など多岐にわたる。乳幼児精神保健に携わるスタッフであれば,詳細な紹介事例と演習問題により,あたかも研修セミナーに参加し,その事例を自分なりに考えるという能動的な読書体験も可能である。また日々の臨床の対象が主として成人である治療者は,本書により,うつ病や物質依存の心理社会的な発症モデルについて,世代間伝達の精神病理も含めて理解を深めることができよう。
構成としては,まず第1章で乳幼児精神保健の基本理念が明記されている。それは,子どもの誕生とその後数年間の育児中の出来事は,その後の子どもの人生に大きな影響を及ぼすが,養育者がこれまでに未解決の喪失体験や心的な外傷体験の出来事があると子どもとの初期の愛着関係に歪みが生じるため,この要となる人生の初期の時期に治療的にかかわることにより,その後の関係性の障害のリスクを軽減するということである。
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