書評
―浜田 晋 著―街角の精神医療 最終章
兼本 浩祐
1
1愛知医科大学精神科学
pp.1082
発行日 2007年10月15日
Published Date 2007/10/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1405101091
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窓の外に広がる辺境の記録と思い
終わりを全うするということはどういうことだろうか。勲章をもらうことか,それとも教授や大病院の院長などの役職を歴任することか。最終章と副題を打たれた本書の終わりにはチェーホフの『桜の園』が引用されている。
「上野も半ば崩壊した。私もこの地を去っていく。どこかへ」という最後の言葉は,三十年の苦闘の歴史をこれと言って誇るでもなく,冷徹に現状を眺めながら,しかしそこで本当に根をおろして生きてきた人だけが語ることができる感慨に満ちている。本書には,すべてがもう変わってしまい自らも年老いながら,生きることはそれでも良いことだったと『桜の園』で思うチェーホフの終章が確かによく似合っている。
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