書評
ナルコレプシーの研究―知られざる睡眠障害の謎
大熊 輝雄
1
1大熊クリニック
pp.334
発行日 2003年3月15日
Published Date 2003/3/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1405100869
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本書は,序言に述べられているように,睡眠障害の専門医として40年以上ナルコレプシーの治療・研究にあたってきた著者が,ナルコレプシーの謎を解き,患者さんや家族の方にナルコレプシーはきっと治る,完治しないまでも安心して社会生活を送れるようになるというメッセージを伝えたいと願って執筆されたものである。
ナルコレプシーは,以前には日中の強い眠気,情動脱力発作,入眠時幻覚,睡眠麻痺(金縛り)などの一見関係のなさそうな症状を持つ珍しい過眠症として,てんかんと並んで記載されていたが,最近は睡眠学の進歩によって,レム睡眠の障害を伴う疾患であることがわかっている。本多博士はご自身で診療した900名近くの患者さんについての調査結果から,日中の居眠りと情動脱力発作が診断に重要であることを明らかにした(第5章)。本書によると,本多博士は,精神科に入局当初から間脳機能の障害として精神障害を理解しようと試み,間脳症の一つとしてナルコレプシーを取り上げたとのことである。そして,睡眠研究のために東大精神科に睡眠外来を設立してチームとして診療,研究を始め,また遺伝研究などでは積極的に部外の研究者と協力して研究を進め,次々と大きな研究成果を挙げていかれた。
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