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はじめに
探索眼球運動は統合失調症の生物学的マーカーとして確立されつつある7)。その際,視覚性探索と眼球運動は記銘,保持,照合の認知過程ともに遂行されるが,広範囲な脳の活動のネットワークが関与し,統合失調症はそのネットワークに障害があると推測される。我々の健常者と統合失調症患者を対象にしたfunctional magnetic resonance imaging(fMRI)の研究9)により,健常者では記銘,保持,照合の条件を通して視覚野,頭頂眼野,前頭眼野,補足眼野,前部帯状回,背外側前頭前野,小脳が賦活し,それに加えて記銘条件での被殻・淡蒼球の賦活,照合条件での視床の賦活が認められた。ところが,統合失調症患者ではこれらのうち記銘条件での背外側前頭前野と被殻・淡蒼球の賦活はみられず,照合条件での視床の賦活もみられなかった。一方,統合失調症患者では健常者より照合条件での頭頂眼野,前頭眼野の賦活は増加していた。これらの結果から,視覚性探索には視覚野,皮質眼野とともに前頭前野-視床-線条体のネットワークが関与し,統合失調症ではそのネットワークに障害があることを示してきた。
視覚性探索以外の課題を用いた統合失調症のfMRI研究で,前頭前野-視床-線条体のネットワークの機能低下を示す報告がなされている6,11,13)。我々の結果9)はこれらの研究を支持すると考えられるものの,興味深いことに統合失調症における皮質下の活動低下とともに皮質の活動過剰を示し,それは照合条件の際に顕著であった。これに関連して,健常者と統合失調症患者の照合条件による賦活に対する眼球運動の測定指標(運動数,移動距離,移動時間)の影響を検討したところ,統合失調症患者における賦活の変化は眼球運動そのものでは説明されず,賦活の変化に関する病的意義の詳細は不明であった。しかし,統合失調症では照合という認知過程の構成要素に障害が内在している可能性は高いと考えられた。そこで,本稿では,統合失調症患者の照合条件による賦活画像は課題の遂行成績,さらに精神症状とどう関連するかを検討した。
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