書評
―アルコール・薬物関連障害の診断・治療研究会(白倉克之,樋口進,和田清)編―アルコール・薬物関連障害の診断・治療ガイドライン
福居 顯二
1
1京都府立医科大学大学院精神機能病態学
pp.906
発行日 2003年8月15日
Published Date 2003/8/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1405100723
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「アルコール・薬物関連障害の診断・治療ガイドライン」が上梓された。これはわが国のこの領域の第一線で活躍する専門医が集まって厚生科学研究班(アルコール・薬物依存症の病態と治療に関する研究班;平成10~12年)を構成し,その研究の成果を広く共有するために,「アルコール・薬物関連障害の診断・治療研究会」として分担執筆され市販に至ったものである。
近年日本で用いられているアルコール・薬物依存症の診断基準は,施設や臨床の経験年数などによりさまざまである。比較的若い世代はICD-10,DSM-Ⅳをもっぱら使い,さらに最近ではAPA(米国精神医学会)治療ガイドラインシリーズを監訳した「物質使用障害―アルコール,コカインとオピオイド」も参考にされる。これにより米国の現状は理解できるが,副題にもあるようにアルコール以外にはコカイン,オピオイドに関する記載のみである。日本の薬物依存情報研究班の調査でも明らかなように,わが国で治療の上位を占める覚せい剤,有機溶剤,抗不安薬については触れていない。また比較的臨床経験の長い医師はICD,DSMなどの操作的診断以外に以前からある「アルコール精神疾患の診断基準;厚生省アルコール中毒診断会議報告,1979」や「覚せい剤中毒者の診断基準;公衆衛生審議会,1982」を参考にする傾向もあった。
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