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第40回日本てんかん学会は,金沢医科大学精神神経科教授 地引逸亀会長のもとに,2006年9月28~29日に金沢市文化ホールにて開催された。金沢市はてんかん学とゆかりの深い都市で,学会の前身であるてんかん研究会も含めると,今回で3回目の開催であるという。学会前日にはプレコングレス「てんかん性精神障害の生物学的研究」にて,4人の精神科医からてんかん精神病や発作後精神病の発表がなされ,地引会長は「PARICTALな発作関連性精神障害」についての概念を報告された。また同じく学会前日に,今回初めて「てんかん学研修セミナー」が開催された。てんかん学の基礎から臨床までわかりやすく解説するため,学会の研修担当役員はその準備に苦労したと聞いているが,二百数十名の若手が参加して大変好評だったとのことである。
学術大会の特別講演は,オレゴン大学てんかんセンターのCerghino教授による「てんかんの新しい薬物療法」と,1988年に金沢で本学会を主催された山口成良先生による「てんかんと視床」の2題であった。新規抗てんかん薬に関する報告を聞くたびに,外国では臨床知見が着々と蓄積されていく中で,日本の後進性が痛感され,患者にとっても不幸な状況であると感じる。シンポジウムでは,アジア・オセアニアてんかん学会からBerkovic教授を「てんかんの分子遺伝学的研究」に,Tan教授を「てんかん臨床のトピックス」に招聘した。日本人シンポジストに混じって英語での発表であったが,アジア・オセアニアの研究者と積極的に交流していこうとする学会の姿勢がうかがわれる。ワークショップの「てんかん診療のガイドライン」では,愛知医科大学の兼本浩祐教授が「心因性非てんかん発作に関する診断・治療ガイドライン」を提案された。日常臨床では,偽発作あるいは擬似(疑似)発作と呼ばれることが多いが,いずれも誤解を与える名称なので心因性非てんかん発作と呼称するのが良いとしている。
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