書評
医療現場におけるパーソナリティ障害―患者と医療スタッフのよりよい関係をめざして
有賀 徹
pp.1264
発行日 2006年11月15日
Published Date 2006/11/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1405100366
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パーソナリティー障害を知る最良の書
この度,『医療現場におけるパーソナリティ障害 患者と医療スタッフのよりよい関係をめざして』が上梓された。救急医療に携わったことのある読者であれば,よく理解されていることと思うが,救急医療において精神医学的な支援を要する局面は多々あって,身体的な治療が一段落するや,しばしば精神科医にコンサルテーションをあおぐ。そのような中で,“パーソナリティ障害”を指摘される事例もまた少なからず経験される。そこでは,“パーソナリティ障害は病気なのか,病気でないのか”について質疑をしたり,一般的な精神病に比して“パーソナリティ障害は10倍も苦労が多い”などと聞いたりするものの,結局のところ,精神医学に疎い我々一般医にとって“パーソナリティ障害”を理解することはやさしいものでは到底なかった。これが我々一般医の本音である。
本書の副題には「患者と医療スタッフのよりよい関係」が謳われているが,まずは我々が一定水準まで“パーソナリティ障害”を知ることがこのための大前提であろう。本書はその意味で我々一般医にそれを叶えてくれる,言わば“傑出した”良書である。もちろん,本書は実際の精神科診療に関するカンファランスを契機にまとめられたもので,精神科医にとってもこの分野で十分に役立つ内容が含まれている。それらは,著者らが大変よく噛み砕いて,親切に説明していることで一見してよくわかる。精神医学の奥の深さや社会とのつながり等々,きわめて含蓄の豊かなことに驚く。
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