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はじめに
心不全患者を評価する際に,心エコー図法はその簡便性・非侵襲性において最も重要な検査の一つである・現在汎用されている断層およびMモード心エコー法,パルスおよび連続波超音波ドプラ法により,心室内腔の変化,壁運動異常などの心構造物の形態変化,心腔内血流動態の観察を行うことでリアルタイムの循環状態に関する情報を引き出すことができる.心不全に限って考えても,心不全例でみられる左室・左房の拡大や局所や全体の左室壁運動低下は心エコー図を用いれば簡単に評価できる.最近では,パルスドプラ法を用いて記録した左室流入血流速波形を解析することにより,心不全の病期・予後を推定することが可能であることが明らかにされてきた.すなわち,心不全の進行により左室流入血流の拡張早期波(E)が増高,心房収縮期波(A)が減高する(図1)1).E/A比が2.0以上となった波形は拘束型波形と称され,予後不良のサインである(図2)2〜4).このように,心不全患者の評価に心エコー図法は必須な検査といっても過言ではない.
一方で,最近の画像解析に関する技術の進歩は目覚しく,多くの技術が汎用機にも搭載されるようになってきた.組織ドプラ法やパワードプラ法やハーモニックイメージなどがそれである.また,心筋自体についての情報,つまり病理組織を観察したときのような情報が得られないかについても心筋組織性状診断と呼ばれる手法として検討されてきた.もし心筋性状についての情報が非侵襲的に得られるならば,心不全治療においても治療効果予測や治療方針決定のために有用であることは疑いようがない.
本稿では,これまで心筋組織性状診断の方法として以前より用いられてきた超音波後方散乱信号の強度(integrated backscatter:IB),さらに新たな心筋組織性状診断の方法としての可能性を秘めるカオス理論によるRF信号解析について,主に不全心でのデータを中心に概説する.
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