トピックス
たこつぼ型心筋症
伊藤 大起
1
,
森野 禎浩
1
1東海大学医学部内科系循環器内科
pp.675-677
発行日 2008年7月1日
Published Date 2008/7/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1543102135
- 有料閲覧
- 文献概要
- 1ページ目
- 参考文献
概念,定義
たこつぼ型心筋症はわが国で命名された心尖部を中心とした一過性の収縮障害であり,1990年に佐藤ら1)によって「急性心筋梗塞に類似した胸痛と心電図変化を有しながら,それに伴う左心室の壁運動異常が一つの冠動脈の支配領域を超えて心尖部を中心とした広範囲に及び,左室造影において“ツボ型”を呈するが,その左心室の壁運動異常は1~2週間でほぼ完全に正常化し,かつ冠動脈造影には有意の狭窄を認めない」と報告された.
成因としては冠動脈の多枝攣縮や微小循環障害,またカテコラミン心筋症などが挙げられているが,そのすべてに矛盾点も多く,いまだ明らかとされていないのが現状である.背景として疾病罹患時も含めた精神的,身体的ストレスに曝露されていることが多く,ストレス心筋障害(stress cardiomyopathy)などと表現されることもある.諸外国では“Takotsubo”の名から病態を連想しにくく,本症の形態学的異常から“apical ballooning”と称されることが多い.筆者らはたこつぼ型心筋症と診断された症例から,類似の病態を惹起しうる脳血管障害,褐色細胞腫,ウイルス性もしくは特発性心筋炎などを2007年発表のガイドラインに基づいて除外し,連続45例において患者背景,症状や各種検査結果などにつき後ろ向きに調査した.この集積をもとに,たこつぼ型心筋症の臨床像を中心に以下に述べる.
Copyright © 2008, Igaku-Shoin Ltd. All rights reserved.