巻頭言
現代結核病学の歴史が教えること
長尾 啓一
1
1千葉大学保健管理センター
pp.873
発行日 2000年9月15日
Published Date 2000/9/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1404902150
- 有料閲覧
- 文献概要
1960年代後半,わが国での結核罹患率の減少はきわめて顕著であり,研究者達は21世紀半ばまでには結核は撲滅できるとの確信を持ちはじめた.それに伴い,呼吸器病学の流れは非結核性呼吸器疾患の研究へと移りはじめ,外科の領域では肺癌に焦点が当てられた.
千葉大学では1962年に肺癌研究施設が開設された.肺癌治療法が急速に進歩した1960年代後半は学生紛争が全国で勃発した時期でもあった.この時期を医学部で過ごした私の世代は結核に関しては患者供覧のない系統講義が1時間あっただけであった.同級生が結核を発病しても“しばらく服薬しただけでもう治ったみたいだ”と聞き,やはり結核の時代は終わりなんだと体感していた.
Copyright © 2000, Igaku-Shoin Ltd. All rights reserved.