Japanese
English
特集 酸化ストレスと心血管病態
活性酸素と運動
Reactive Oxygen Species and Physical Exercise
大野 秀樹
1
,
鈴木 健二
1
,
人見 嘉哲
1
,
木崎 節子
1
Hideki Ohno
1
,
Kenji Suzuki
1
,
Yoshiaki Hitomi
1
,
Takako Kizaki
1
1杏林大学医学部衛生学
1Department of Hygiene, Kyorin University, School of Medicine
pp.761-767
発行日 2000年8月15日
Published Date 2000/8/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1404902134
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はじめに
ごく最近まで,わが国では重労働が脳卒中発生率を高めるという図式がみられた.一方,欧米では,身体活動量の日常的な不足が虚血性心疾患を招いている1).わが国でも加速的に社会様式の欧米化が進み,身体活動量の減少に呼応して肥満度が増して,現在では生活習慣病が大きな社会問題になっている[15歳以上の日本の肥満人口は約2,300万人(1998年国民栄養調査)].現に,運動不足,肥満に基づいていると思われる予備群も含めた糖尿病の可能性が否定できない人が,同年の厚生省糖尿病実態調査では1,370万人にも達している.すなわち,もっと身体活動量を増やすために,定期的に運動を行うことが強く推奨されるようになった.
しかしながら,一方,加藤2)による「運動は活性酸素を発生させ,寿命を短縮する」という警告が,運動はからだに悪いという認識を人々に与え,運動によってQOLを高め生活習慣病を予防しようとする健康づくりブームにブレーキをかけ,それが今日まで続いている.確かに,運動は諸刃の剣の性質をもつ.しかし,ネガティブな面が出現する多くの場合は,熱心に健康を求めるために無理を生じたり,例えばトライアスロンやウルトラマラソンのように非常に過酷な運動を行うケースである.通常の適度な運動には多くのメリットがあることが,多くの経験的および科学的事実で裏付けられている3).
本稿では,「活性酸素と運動」を心血管を中心に紹介したい.
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