巻頭言
AnatomyからPrognosisへ
山科 章
1
1東京医科大学第二内科
pp.115
発行日 2000年2月15日
Published Date 2000/2/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1404902036
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EBMという言葉を最近頻繁に耳にあるいは目にする.高血圧,冠動脈疾患,心不全,不整脈,高脂血症の治療などについても多くのevidenceが紹介されて,こういった疾患の治療の進歩に大きく貢献してきた.我が国にもEBMの概念が導入され急速に広まりつつある.しかし残念なのは,こういったevidenceのほとんどが外国産すなわち借り物であり,疾患体系の異なる我が国における自前のものが皆無な点である.
EBMを実践するにはいくつかのステップがある.その各々において,診断への到達,予後の推定,治療法の決定,害の推定,を行い,最高の質の医療を提供する方法を導き出す.そのなかで予後の推定は重要である.診断がついても予後が良好だと判断されれば治療の必要はない.仮に疾患を見落としてもその予後が良好だと断定できれば放置してもかまわない.例えば,負荷心筋シンチの結果が陰性のときの予後が冠動脈病変の有無に関係なく良好なのであれば,冠動脈造影を行わないために冠動脈の有意狭窄を見落としたとしても問題はないはずである.医療の最終的な利益とは,検査結果の改善ではなく有害事象発生を防止することにあるからである.
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