Topics Respirtion & Circulation
アンジオテンシンⅡ受容体拮抗薬の臨床応用時の問題点とアンジオテンシンⅡ受容体研究の進歩
松原 弘明
1
,
森 泰清
1
1関西医科大学第二内科
pp.421-422
発行日 1998年4月15日
Published Date 1998/4/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1404901682
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最近の動向 1980年代の後半より始まった経口可能なアンジオテンシン(Ang)1型(AT1)受容体拮抗薬の開発,AT1受容体(1991年)・AT2受容体(1993年)のcDNAクローニングによりAngII受容体に関する基礎・臨床研究が急展開した.AT1受容体拮抗薬が高血圧・心不全治療薬として安全に臨床応用されることとなり,ACE阻害薬で確立された心血管・腎保護作用がAT1受容体拮抗薬でも確認された.AT1受容体拮抗薬とACE阻害薬の薬理作用の違いは,前者では血中Ang II濃度が上昇し,これがAT2受容体を選択的に刺激する.一方,ACE阻害薬ではブラジキニン系が賦活され,結果としてプロスタグランジン系やNO産生が亢進するとされる.現在,多くの大規模比較臨床試験が行われているが,降圧作用・心保護作用において両者間には大きな差はなく,これはACE阻害薬の持つ空咳の副作用を考えるとAT1受容体拮抗薬が将来的に臨床的には優れるかもしれない.
AT1受容体拮抗薬の投与時には残ったAT2受容体作用が重要である.成人の心血管系での発現は極少量であるが,心筋梗塞などの再構築心ではAT2発現は亢進する.このAT2は遺伝子操作動物の研究よりAng IIによる心拍数増加・心筋間質線維化を抑制し,AT1と拮抗して心保護作用を発揮することが明らかとなった.この分子機構としてAT2によるペースメーカ細胞でのT型Caチャンネル抑制・心筋線維芽細胞からのマトリックス蛋白生合成抑制が考えられた.
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