Topics Respiration & Circulation
心臓の細胞内情報伝達系の役割
福田 恵一
1
1慶應義塾大学医学部呼吸循環器内科
pp.1153-1154
発行日 1998年11月15日
Published Date 1998/11/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1404901802
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■最近の動向 心臓の細胞情報伝達系の研究は従来のセカンドメッセンジャー測定やMAPKカスケードの解析,肥大特異的遺伝子の発現などから大きく変わりつつある.その特徴として,第一にこれまで心肥大とは全く無関係と考えられた経路が心肥大に重要であることが次々と明らかにされつつある点,第二にこれまで特異的阻害薬が存在しない場合にはそのシグナルの持つ意義の解析が困難であるとされたものが,アデノウイルスやその他の方法を用いて不活型(donninant negative)や活性型(constitutive active)の遺伝子を用いることにより機能解析が可能となった点が挙げられる.
本稿では,新しい心肥大の経路として,①カルシニューリン/NF-AT3/GATA4系を紹介する.この経路はT細胞の細胞情報を伝達する主要な経路であるとされてきた.NF-ATs転写因子群の中でNF-AT3のみは多くの細胞に存在することが知られていた.GATA 4は心筋細胞の発生に重要な働きを持つ遺伝子であるが,免疫系の主要なシグナル伝達因子であるNF-AT3と結合し心肥大を促進することは誰も予想し得なかったといってよいであろう.
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