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はじめに
プロテインキナーゼC(カルシウム,リン脂質依存性蛋白質リン酸化酵素:PKC)は,1977年に発見されて以来1),様々な細胞内情報伝達に関与していることが証明され,細胞内情報伝達機構におけるもっとも重要な酵素の一つとして知られてきた。本酵素の活性は,中枢神経系に高く,とくに海馬は,脳内で活性がもっとも高い部位の一つである。PKCは,神経伝達物質遊離の調節,イオンチャネルや神経伝達物質受容体の感受性の制御を行うことにより,いろいろな神経機能,たとえば,可塑性の発現などに密接に関与していることが報告されている。今日では,10種類以上のPKC分子種の構造が明らかにされ,各分子種は神経系において,それぞれ微妙に異なる活性化様式を持ち,独自の分布を示し,細胞内の特定のコンパートメントに局在することが示されている2)。細胞内で情報が伝達される過程で,各分子種の局在は空間的に,また,時間的に変化して活性化のカスケードを作るとともに,他の情報伝達系とクロストークして3),海馬を含む中枢神経系の複雑な情報伝達機構を司っているものと考えられる。この章では,PKCの海馬での細胞内情報伝達に対する役割として,その分子種と海馬での細胞内局在,また,記憶,学習の基礎過程と考えられている海馬の長期増強との関連を中心に述べていくこととする。
Protein Kinase C (PKC), a calcium-activated, phospholipid-dependent protein kinase, is abundant in the central nervous system, especially in hippocampus. PKC plays an important role in the processing of neuronal signals and in the short-term or long-term modulation of synaptic transmission, such as long-term potentiation (LTP). The enzyme is a member of a family consisting of at least ten subspecies, α, βI, βII, γ, ε, η, θ, ζ and λ.
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