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はじめに
吸入療法は,呼吸器疾患の治療において重要な部分を占めている.吸入投与では,直接気道の病変領域に薬剤を到達できるため,少量の薬剤でも有効であり,また全身的な副作用が少ないという利点を持つ.エアゾルとして実際の治療に使用されはじめたのは今世紀の初めにさかのぼり,その後欧米を中心として様々な改良が加えられ,現在では多くの種類の吸入装置や吸入剤型が診療の場に供されている.すなわち,ジェットネブライザー,超音波ネブライザー,IPPB(IntermittentPositive Pressure Breathing),p-MDI(加圧式定量噴霧式インヘラー:pressure MeteredDosed Inhaler),DPI(Dry Powder Inhaler)などの吸入装置・剤型であり,これらを用いてβ2刺激剤,抗コリン剤そしてステロイド剤が主に閉塞性呼吸器疾患の患者に対し,効果的に使用されている.装置のかさばるネブライザーによる治療は携帯性や価格に難点があり,近年ではフロンガスなどの噴射剤を含有したハンドネブライザー(p—MDI)や噴射剤を含まない粉末製剤(DPI)が成人患者における吸入療法の主流になってきている.
閉塞性呼吸器疾患における代表的なものに気管支喘息がある.今日に至るまで本疾患に対する様々な研究や多くの医薬品が開発されてきたが,今なお世界中で多数の患者が病み,最悪の場合は死亡している.入院や治療による直接的医療費だけでなく,就学や就労できないための間接的な社会的損失も非常に大きい.こうした状況を踏まえて,ICR(国際委員会報告:1992年)やWHO(1995年)に代表される喘息治療ガイドラインが欧米を中心に発表され,日本でも日本アレルギー学会が1993年にガイドラインを発表している1〜3).
そのなかにおいて,治療の基本に位置づけられているのが吸入ステロイド剤である.これは喘息の根底には炎症が存在していることが,近年明確になってきたという医学的背景がある.気管支拡張剤やステロイド剤による吸入療法は特に喘息の治療において,非常に理にかなった治療方法であると考えられる.その一方で,吸入操作が正しく行われていないケースの多いことが分かっており,患者指導の大切さが指摘されている.ここでは,喘息治療の吸入療法に用いられる剤型のうち,p-MDIおよびDPIに主に焦点をあてて話を進めてみたい.
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