今月の主題 アポ蛋白
総説
アポ蛋白;その性状と機能
山本 章
1
,
横山 信治
2
Akira YAMAMOTO
1
,
Shinji YOKOYAMA
2
1国立循環器病センター研究所病因部
2国立循環器病センターリウマチ研究室
pp.1693-1702
発行日 1984年12月15日
Published Date 1984/12/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1542912441
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はじめに
血液を介する脂質の搬送には二つの形式がある.一つはアルブミンと結合した遊離脂肪酸(FFA)であり,脂肪組織の中性脂肪(トリグリセライド)がホルモン感受性リパーゼの作用によって分解し,生じた脂肪酸を全身諸組織にエネルギー源として供給するものである.もう一つは,腸管から吸収された脂質や肝臓で合成した脂質を主に脂肪組織と筋肉,その他末梢組織に向けて搬送し,あるいは末梢組織から余剰のコレステロールを奪って肝臓に回収するなどの目的をもって作られたリポ蛋白である.
リポ蛋白はその基本構造として,いくらかのコレステロールエステルを含んだトリグリセライドの微粒子をcore (芯)とし,その表面をリン脂質とコレステロールから成る一層の膜(surface coat)で被い,さらこれに個有の蛋白質が附着した形をとっている1〜3).すなわちリポ蛋白とは,糖蛋白やヘム蛋白とは違って,脂質と蛋白質間に共通結合のような強固な化学結合があるのではなく,ファンデルワールズ力を主として比較的弱い結合でつながれている.そのためリポ蛋白という名に代えて"lipid protein complex"という呼び名を用いたほうがよいという考え方もある.いずれにしてもこのリポ蛋白に個有の蛋白質はアポリポ蛋白(略してアポ蛋白)と呼ばれる.
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