巻頭言
不整脈治療の進展と課題
相沢 義房
1
1新潟大学医学部第一内科
pp.1227
発行日 1996年12月15日
Published Date 1996/12/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1404901377
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不整脈治療の進歩:
不整脈では様々な症状をもたらすが,その最たるものは不整脈による突然死である.致死的不整脈の防止を目的に,新しい治療法が確立されてきた.その背景にはDr.WellensやDr.Josephsonらによる臨床電気生理学的検査の確立がある.すなわち,陳旧性心筋梗塞に合併する持続性心室頻拍を中心に,プログラム電気刺激によって臨床的心室頻拍(自然発作と同波形の心室頻拍)が再現性をもって誘発されることが判明した.この方法で,頻拍(またはその基盤の有無)が非発作時にも積極的に診断できるという意義がある以外に,これまで推定の域にあった心室頻拍の機序がリエントリーであることを支持する強力な証拠をもたらした.
次いでリエントリーを機序とする持続性心室頻拍では,誘発阻止作用の有無を検討することで抗不整脈薬の有効性が判定されるようになった.この方法は,発作性で頻度の少ない頻拍の予防を期する場合,有力な武器となった.一方,この方法で抗不整脈薬の限界も明らかにされ,これが新らしい抗不整脈薬の開発を促進したが,このように開発された抗不整脈薬にも限界が判明した.他方,突然死の危険因子である多発する期外収縮や非持続性心室頻拍を治療しても,梗塞後の突然死の予防にむすびつかず,むしろ悪化することも確認された.その結果,Kチャネルの制御作用を有するIII群抗不整脈薬に期待がよせられたが,純粋なKチャネル制御薬の限界が明らかにされた.唯一Kチャネルを制御し,かつ他のイオン・チャネルにも作用するIII群薬の有用性が判明しつつある.
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