Topics Respiration & Circulation
TNF-α receptorの基礎と臨床研究
橋本 修
1
1日本大学医学部第一内科
pp.1217-1218
発行日 1996年11月15日
Published Date 1996/11/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1404901375
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■最近の動向 急性肺傷害,肺線維症,サルコイド-シス,気管支喘息,などの呼吸器疾患をはじめ種-の疾患の病態形成にtumor necrosis factor-α(TNF-α)が関与することが指摘されている.TNF-αは,細胞表面上のTNF-α受容体(TNF-R)に結合し細胞を活性化する.TNF-Rには55kDaのTNF-RI(TNF-R p55)と75 kDaのTNF-RII(TNF-R p75)があり,これらの受容体の細胞外部分が切断され遊離(shedding)した可溶性TNF-RI(sTNF-RI)と可溶性TNF-RII(sTNF-RII)は,TNF-αのTNF-Rへの結合と競合拮抗することによりTNF-α作用を中和する.TNF-αが病態形成に関与する疾患の治療戦略としては,薬剤によるTNF-α産生の抑制,抗TNF-α抗体やsTNF-RによるTNF-α作用の抑制などがある.実際に抗TNF-α抗体やsTNF-Rの動物疾患モデルに対する効果が検討されている.同時に,種-の疾患でのTNF-αとsTNF-Rの動態も検討されてきた.TNF-Rの発現とsTNF-Rの遊離は,主に単球/マクロファ-ジやリンパ球などの免疫担当細胞と呼ばれる細胞を対象に研究されてきたが,気道局所の細胞のTNF-R発現とsTNF-R遊離に関しては不明であった.また,呼吸器疾患のsTNF-Rの動態に関しては十分には検討されておらず,ヒトに対する治療効果に関しても明らかではなかった.本解説では,気道局所でのsTNF-R産生とその調節機構,呼吸器疾患のsTNF-Rの動態の検討,sTNF-Rの治療効果に焦点を絞り,いくつかの論文を解説する.
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