Topics Respiration & Circulation
安定期のCOPD患者に対する吸入ステロイドの効果
近藤 哲理
1
1東海大学医学部第二内科
pp.997-998
発行日 1996年9月15日
Published Date 1996/9/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1404901339
- 有料閲覧
- 文献概要
■最近の動向 気管支喘息に対する吸入ステロイド療法は,理論・実際ともに確立した観がある.一方,COPDは1秒量が年間70ml程度減少していく慢性進行性疾患であり,未梢気道領域の慢性炎症が病態と考えられている.このような慢性炎症に対してのステロイド投与は理論的には容認し得るものの,実際の効果には議論が多い.経ロステロイドは少数(10%程度)のCOPD患者には1秒量の改善効果があるが,吸入ステロイドの効果には賛否両論が存在する.
今回紹介した最近の3篇の論文では,吸入ステロイドの有効性を述べている.これらをまとめると,吸入ステロイドは気道の可逆性を有する患者に効果が多く期待でき,自覚症状の改善とβ2刺激剤吸入回数の低下,さらに急性増悪の頻度を減らす効果が期待されるが,肺機能の改善あるいは経年変化の阻止を数値的に示すほどの効果は得られない.しかしながら,ステロイド投与中の気道分泌物の性状を調べると長期的には効果が期待できる.このように,COPD患者のすべてに吸入ステロイドが有効とはいい難いが,経口ステロイドが有効な患者や気道の可逆性を有する患者に中等量の吸入ステロイドの長期投与は試みる価値があると思われる.ブデソナイド,フルチカゾンは2〜3年中に発売される吸入ステロイドであるが,ベクロメサゾンと等価と概算して,投与量を評価してほしい.
Copyright © 1996, Igaku-Shoin Ltd. All rights reserved.