巻頭言
末梢と中枢
斎藤 宗靖
1
1自治医科大学大宮医療センター心臓血管科
pp.925
発行日 1994年10月15日
Published Date 1994/10/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1404900932
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血管拡張療法が理論的に裏付けされ,臨床に応用されたのは1973年である.それまで不全心の挙動はもっぱら心室の拡張期充満,フランク・スターリング機序,心筋の収縮性などの観点からとらえられており,左室の駆出抵抗,あるいは動脈のインピーダンスが左室挙動に重要な影響を及ぼすことはすでに明らかになっていたにもかかわらず,それが臨床の場で心不全の治療に応用されていなかった.心不全治療における血管拡張療法は当時はきわめて斬新な考え方であり,心機能の改善が心不全治療の中心であると考えていた筆者には,コロンブスの卵的な意表をついた発想であった.Cardiologistは心臓ばかりを見ていてはいけないと,改めて広い視野に立つことの重要性を悟らされたものである.今では血管拡張療法の有用性は確立され,特にACE阻害薬はジギタリス,利尿薬とならぶ心不全治療の基本薬となっていることは周知の事実である.
心不全患者における運動制限の機序として心ポンプ機能の障害があることは当然であるが,末梢骨格筋の問題もそれに劣らず重要である.例えば僧帽弁狭窄症に対してカテーテル手技による僧帽弁開大術を行って狭窄を解除すると,その直後に心ポンプ機能は改善し心拍出量は増加するものの,運動耐容能はそれほど改善せず,運動能力は数カ月にわたる時間経過を経て,徐々に改善されることが明らかとなっている.
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