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綜説
ジギタリス—心不全治療薬としての再評価
Digitalis Glycosides : Reappraisal as a old, but potent neurohumoral modulator
吉川 勉
1
Tsutomu Yoshikawa
1
1慶應義塾大学医学部内科呼吸循環科
1Department of Internal Medicine, School of Medicine, Keio University
pp.926-933
発行日 1994年10月15日
Published Date 1994/10/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1404900933
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はじめに
William Witheringが1785年に“An Accountof the Foxglove”を記述してから200年以上の長きにわたって,ジギタリス薬は頻拍性上室性不整脈および心不全の治療に使用されてきた.当初は貴重な心疾患治療薬として評価されたが,リウマチ性心疾患の減少に伴い洞調律の心不全例が相対的に増加するに従い,その効果が疑問視されるようになった.1970年代から80年代には強力な陽性変力作用を有する強心薬が続々と開発され臨床応用された.予想に反して,これらの薬剤は心不全患者の予後を改善するには至らず,なかには予後を悪化させるものすら認められた1,2).強心薬の臨床試験の反省と最近のSOLVD試験3)やVHeFT-Ⅱ試験4)などの大規模な多施設共同研究の結果から,心不全の予後決定因子としての神経体液性因子の重要性が注目されるに至った.対象が限られるが,β遮断薬治療も神経体液性因子の賦活化を抑制するように作用する5,6).ジギタリス薬の強心作用は強力ではないが,神経体液性因子に及ぼす効果から最近その意義が見直されつっある,
本稿では心筋細胞内情報伝達系におけるジギタリス薬の位置づけ,神経体液性因子に及ぼす影響,最後に臨床試験の結果について概説する.
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