視座
不安と期待
新名 正由
1
1防衛医科大学校整形外科
pp.533
発行日 1993年5月25日
Published Date 1993/5/25
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1408901105
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21世紀まで,余すところ7年足らずとなった.国際紛争の頻発,東西ドイツの統一,ソ連邦の崩壊,飢餓,環境汚染の深刻化,麻薬,エイズと難問が地球規模で広がり,極東の島国,日本も否も応もなくそれらの問題に巻き込まれ,その対応に追われることになる.PKOへの自衛隊の派遣がその良い例であり,私達の教室に属する若い医官も現在参加しており,嵐の過ぎるのを一人座して待つ状況ではなくなっている.今後,あらゆる事が一国単位ではなく,人類全体の問題として取りあげられ,協議されてゆくようになるものと思われる.先日,スキーの複合競技の世界の王者,荻原がテレビのインタビューで「結局,我々日本人も外国人と同じ人間なんだなと実感している」と言っていたが,その衒いのない態度に,来世紀には日本人も地球人として立派にやってゆけるなと感じられ,すっかり嬉しくなった.
それでは,日本の整形外科学会の21世紀の姿は? 若くて優秀でかつ国際感覚に富んだ整形外科医が多く輩出する可能性は? 情報化社会の中で輸出入均衡型の情報発信基地となり得る可能性は? こういった質問に対して,正直言って,私には確固とした解答はまだ見えてこない.確かに1万7千人の会員を擁し,しかも人口構成の変化や,健康とQOLの維持を目的としたスポーツの普及を考えると,整形外科の将来は決して暗いものではないと言える.しかし,そこにはいくつかの但し書が必要のようにも思える.
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