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特集 肺動脈血栓塞栓症の基礎と臨床
肺動脈血栓塞栓症の疫学—わが国の現状
Pulmonary Arterial Thromboembolism:Present status of epidemiology in Japan
国枝 武義
1
Takeyoshi Kunieda
1
1慶應義塾大学伊勢慶應病院内科
1Department of Internal Medicine, Ise Keio Hospital, Keio University
pp.325-332
発行日 1997年4月15日
Published Date 1997/4/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1404900021
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はじめに
肺動脈血栓塞栓症は血栓性塞栓子が肺動脈を閉塞する疾患であり,単に肺血栓塞栓症ともいわれる1).肺血栓塞栓症がわが国では少ないことはよく知られたことであるが,近年増加の傾向にあることは,各施設での臨床例の報告が増加したことより知ることができる.しかし,その実態は依然不明である.肺血栓塞栓症は認識しなければ決して診断できない疾患であり,増加の原因については今日の診断技術の進歩も当然考えられるが,それだけでは説明できないものがある.生活様式の欧米化,高齢化2)の要素の関与が想定されているが,臨床例の増加に対する確たる証拠は示されていない.一方では,院内発生の症例の増加に関しては,最先端医療の導入など医療・医術の高度化の要素も考慮に入れなければならない.
肺血栓塞栓症は急性から慢性まで,さらにまた軽症から重症まで多彩な病態を示す疾患群であり単純なものではない.そのため,その疫学を述べるに当たっては,疫学の根拠となる疾患の定義をはっきりさせる必要がある.臨床症状を全く表さないような,たまたま病理組織診断でのみ発見されるような臨床下のものから,致死性急性肺血栓塞栓症,さらには肺高血圧を伴う慢性肺血栓塞栓症までがある.
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