連載 Dr.長坂の身体所見でアプローチする呼吸器診療・5
胸痛の診察
長坂 行雄
1
1洛和会音羽病院 洛和会京都呼吸器センター
pp.777-783
発行日 2016年8月15日
Published Date 2016/8/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1404206011
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胸痛はよくある症状で,PubMedでchest painを検索すると7万件以上ヒットする.cardiacを加えると約半数の3.5万件だが,pleuriticでは700件と全体の1%に満たない.筋骨格系のmusculo-skeletalでは,100件強とさらに減る.心血管系の胸痛は生命に直結し,報告も多い.しかし,胸痛の訴えで実際遭遇するのは急性疾患の多い救急外来においても1/3は筋,骨格系の障害で,消化器疾患,冠疾患をはじめとする循環器,呼吸器疾患による胸痛はいずれも10〜20%という1).
急に胸が痛くなった,という訴えで最初に考えるのは生命に直結する狭心症,心筋梗塞,それと大動脈解離である.いずれも突然始まる強い痛みだが,呼吸とは関係しない.診察時に大きく息を吸わせて,息を吸うと右か左,どちらかの胸が痛い,咳をすると余計に痛い,と言えば,呼吸器に関連する痛みである.胸膜,肺以外に,胸郭や周囲の運動器からも同様の痛みが発生する.
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