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特集 肺高血圧症の病態と治療2016 Up to Date
肺高血圧症に対する肺選択的薬剤効果を目指して
Targeted Drug Delivery System for Pulmonary Arterial Hypertension
坂尾 誠一郎
1
Seiichiro Sakao
1
1千葉大学大学院医学研究院呼吸器内科
1Department of Respirology, Graduate School of Medicine, Chiba University
pp.588-592
発行日 2016年6月15日
Published Date 2016/6/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1404205976
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はじめに
肺動脈性肺高血圧症(PAH)患者に対する選択的肺血管拡張薬の主な投与経路は,経口,静脈注射(静注),皮下注射(皮下注),吸入である.実際に同薬のターゲットは肺動脈であり,いかに効率良く薬剤をターゲット臓器に到達させるかが重要である.静注製剤は直接血管内へ,皮下注および経口製剤は皮膚組織または経腸的に吸収され,血流を介して薬剤有効成分が全身を巡る.そのため薬剤効果はターゲットである肺動脈以外にも様々な臓器に作用し,非特異的な副作用の発現につながる.その副作用の発現により,結果として服薬遵守が低下し投与可能な治療薬量が制限される.そのため,体内の薬物分布を肺選択的に量的・空間的・時間的に制御し,コントロールすることが重要であるが,実際に肺高血圧症の臨床ではいまだ困難な課題となっている.
近年,上記課題を克服する薬物送達法としてドラッグデリバリーシステムが肺高血圧症治療にも応用され始めた.消化管(腸など)や皮膚からの吸収を改善するためのプロドラッグ化や投与経路を変更する吸収改善,薬の血中濃度を適切な濃度に保つため徐放性製剤化する放出制御,薬剤の修飾により目的とする部位へ効率良く薬剤を届ける標的指向化,などがこれに当たる.現行の選択的肺血管拡張薬や研究開発または治験段階にある薬剤の効果向上および副作用の低減を目指し,標的指向化のためリポソームやナノ粒子などの様々なナノ担体が報告されている1).本稿ではPAHにおける現状のドラッグデリバリーシステムについて示すとともに,将来的な展望も併せ文献的考察を加えながら論じたい.
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