Japanese
English
- 有料閲覧
- Abstract 文献概要
- 1ページ目 Look Inside
- 参考文献 Reference
はじめに
炎症とは,生体が傷害を受けた際に引き起こす一連の生体反応であり,異物や壊死した細胞を排除して生体恒常性を維持しようとする防御反応ともいえる.この炎症の原因としては,主に,ウイルス,細菌,真菌,原虫などの感染症が引き起こす「生物学的因子」や,外傷,紫外線,放射線などが引き起こす「物理的因子」,酸,アルカリ,毒素などが引き起こす「化学的因子」が知られている.
例えば細菌やウイルス感染においては,その細菌やウイルスのpathogen-associated molecular patterns(PAMPs:病原体関連分子パターン)と呼ばれる構成成分を,pattern-recognition receptors(PRRs:パターン認識受容体)と呼ばれるセンサーが感知して,生体防御反応が働く.この細菌やウイルスなどの構成成分による刺激をdanger signalという.このようなdanger signalにより自然免疫系が活性化されると,免疫応答に必須な炎症性サイトカインや炎症性メディエーターが産生され,また好中球,マクロファージ,樹状細胞などの自然免疫担当細胞が動員され,「炎症」が引き起こされ,さらにその後獲得免疫系も活性化され,感染症の病態形成に大きく関与することが知られている.本稿では,筆者の行っている研究に関わる,インフルエンザ感染免疫と炎症,ヒストン脱アセチル化酵素(histone deacetylase;HDAC)阻害薬の抗炎症作用,マクロライド系抗菌薬の抗炎症作用,感染を契機としたchronic obstructive pulmonary disease(COPD)急性増悪と炎症,を中心に感染免疫における炎症に関して概説して行きたい.
Copyright © 2016, Igaku-Shoin Ltd. All rights reserved.