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近年,世界的な移植ドナー不足は深刻な問題となり植込型補助人工心臓(VAD;ventricular assist device)の需要は急激に高まっており著しい機器の進歩や活発な臨床研究が行われている.わが国では1997年の臓器移植法の制定後に心臓移植が可能となり,2010年の移植法改訂により脳死に陥ったご本人が臓器提供に反対の意思表明をしていなかった場合は家族の承諾をもって提供が可能となった.しかしながら,わが国での心臓提供者数は欧米諸国やアジア各国と比しても極端に少なく,Stage Dの状態での移植待機期間は2年(血液型・体格によっては4年)を超える.このため9割以上のレシピエント候補者がVAD装着下に移植待機(bridge to transplantation;BTT)となる状況が続いていた.従来は体外設置型VADが唯一の選択肢であったが,2011年に植込型VADが保険償還となり,これまで300例を超える手術が施行された.また,移植登録前あるいは非適応患者に対するdestination therapy(DT)に対する取り組みも行われている.これら心不全advanced therapyの成功の可否は,予後を予測し適切なタイミングで移植登録・BTTに移行することにあるといっても過言ではない.さらにDTがわが国にても施行されるようになると,VAD治療は決して特別な施設でのみ行われる特殊な治療ではなく,心不全患者の診療に携わるすべての医師がその適応・至適タイミング,メリットおよびデメリットや装着後のマネージメントを理解し患者に治療オプションとして提示できるようになることが求められる.つまり循環器に携わる医師にとって身近な治療となりうる.
本稿では,まず最近の植込型VADに対する動向について紹介し,日常の心不全臨床におけるVADを考慮すべきタイミングや術後マネージメントの工夫・留意点について解説する.
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