Japanese
English
- 有料閲覧
- Abstract 文献概要
- 1ページ目 Look Inside
- 参考文献 Reference
最近1年間の肺真菌感染症を巡る全般的な話題
[1]原因菌種の変化:遺伝子分類による新興真菌(隠蔽種)の出現と抬頭
新興真菌症の抬頭としては,接合菌症(ムーコル症),フザリウム症などが挙げられるが,昨年は隠蔽種の存在が大きくクローズアップされた.近年の分子生物学的解析法の導入により,真菌についても,これまで一つの菌種とされてきたもののなかに,多くの菌種が紛れていることが分かってきており,これらをいわゆる隠蔽種(cryptic species)あるいは関連種(related species)と総称している.たとえばアスペルギルス症起因菌の代表とされるAspergillus fumigatus(A. fumigatus)のなかにも,薬の効きが悪いもの,色調や形態が少し変わっているものが混じっていることが以前から知られていたが,実はそれらのなかには別な菌が混じっていたことが明らかになった.菌としての性質が異なっているものについては,診断や治療を大きく考え直す必要に迫られている.正しく治療する観点からも,もはや無視することはできない.
具体的にはA. fumigatusの隠蔽種として,A. lentulus,A. udagawae,A. viridinutansなどがよく分離されている.これらのA. fumigatus隠蔽種はしばしばアゾール薬およびamphotericin Bに耐性を示して治療抵抗性となる1).一方,それらの病原性はA. fumigatusと比べても遜色がない.世界中の様々な施設で検討された結果,A. fumigatusとして同定されてきた臨床分離株の5〜6%が実はこれらの隠蔽種であったことが明らかになっており2),一般的に考えられている以上に頻度が高い菌群であることが明確となった.一般的なアスペルギルス症の治療に抵抗性であった症例のなかには隠蔽種による感染が相当数潜んでいた可能性がある.隠蔽種はしばしば治療方針や予後を大きく左右するが,隠蔽種であるかどうかを確認するためには実際に培養する以外に方法がなく,感染症診療における培養の重要性が改めて示された形となった.
Copyright © 2015, Igaku-Shoin Ltd. All rights reserved.