Japanese
English
特集 スタチン投与後のレジデュアル・リスク
残存リスクとして見直されるHDL-Cの質
Highlighting HDL Function as a Residual Risk in Cardiovascular Disease
荒川 純子
1
,
中家 和宏
1
,
池脇 克則
2
Junko Arakawa
1
,
Kazuhiro Nakaie
1
,
Katsunori Ikewaki
2
1自衛隊中央病院循環器内科
2防衛医科大学校神経・抗加齢血管内科
1Division of Cardiology, Self-Defense Forces Central Hospital
2Division of Anti-aging and Vascular Medicine, Department of Internal Medicine, National Defense Medical Collage
pp.815-822
発行日 2015年9月15日
Published Date 2015/9/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1404205777
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はじめに
動脈硬化性心血管疾患(ASCVD;atherosclerotic cardiovascular disease)の発症リスクとしての高low density lipoprotein-cholesterol(LDL-C)血症の確立や,スタチンによるLDL-C低下療法が心血管イベント抑制に大きく貢献してきたことは広く認識されている.一方,LDL-C低下をターゲットとしたスタチン治療の有効性確立の影で,未だ約70%のresidual riskが残存していることも事実であり,このresidual riskの解明とそれを標的とした薬剤の開発は急務の課題である.
high density lipoprotein(HDL)は超遠心法により分離され,比重が1.063〜1.210g/mlのリポ蛋白と定義され,血中HDL-cholesterol(HDL-C)濃度はASCVDの負の危険因子であることが国内外の疫学調査で報告されている.また最近では,LDL-Cを70mg/dl以下に低下させた患者においても,HDL-C濃度と冠動脈疾患が負の相関関係を示すことも知られている.このようにHDLは抗動脈硬化作用をもつリポ蛋白と考えられており,この作用に注目した治療法の開発が現在多くの施設で行われている.特に最近では,HDLの様々な抗動脈硬化作用が明らかになってきており,単に血中HDL-C濃度を増加させるのではなく,その機能を増強する治療戦略が注目を集めている.
本稿では,HDLの機能,つまりその質に着目し,residual risk克服に向けたその抗動脈硬化作用や創薬の現状について概説したい.
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