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はじめに
優れた吸入ステロイド薬(ICS)の開発とその普及により,中等症までの喘息患者のコントロールは格段に向上した.一方で5〜10%に残る重症難治例では,依然副作用の多い全身性ステロイドの頻用を余儀なくされる.しかし近年喘息病態の解明に伴って標的分子に対する薬剤開発が進んでおり,重症難治例のコントロール改善に向けて期待が高まっている.本稿では,気管支喘息治療における主な標的分子について,その分子機構を概説するとともに,抗IL-5抗体,抗IL-13抗体など現在進行中の分子標的薬の治験結果も紹介する.
喘息の臨床像は多彩であり,喘息は症候群的疾患と認識されている.またその病態にはメディエーターのスープと表現されるほど多くの因子が関与する.したがって喘息治療の標的分子候補を抽出するには,マウスモデルでの知見などを参考にするとともに,患者の臨床像や炎症パターンを層別化し,各群の主軸となる分子を抽出する必要がある.2008年英国のHaldarらは,比較的軽症の喘息を多く含むプライマリーケアの患者と比較的重症例の多い2次医療機関での患者をクラスター解析した結果を報告した.2次医療機関例では①症状に乏しいが,好酸球性気道炎症が強いクラスター,②好酸球性炎症と症状が相応する若齢発症アトピー型喘息,③好酸球性炎症は乏しいが,症状の多い高齢発症の肥満女性,④好酸球性炎症は乏しいが,症状の多い若齢発症アトピー型非肥満群が同定された1).続いてMooreらが,米国SARP対象を含めた喘息例のクラスター解析を行い,重症例では①成人発症の肥満女性で非アトピー型,②小児期発症のアトピー型,③成人発症で,好中球性炎症も混在し,不可逆性の気流制限を呈するクラスターを同定した2).筆者らもKiHAC多施設共同研究に登録された224名でクラスター解析を行い,中〜重症喘息例に高齢発症で症状に乏しいが,遷延性好酸球性炎症を呈するクラスターとコントロール不良で好中球性炎症や全身性炎症を呈するクラスターを同定した3).本稿では重症アトピー型,遷延性好酸球性,好中球性(もしくは混合型)喘息など,これまでに集約されてきた重症喘息の炎症表現型に関連する標的分子とその治療薬4)を中心に概説する.
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