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はじめに
心筋炎は無症状のものから突然死に至るものまで幅広い病状を呈する.また,発症初期から致死的不整脈で救急搬送されてくるものから,消化器症状や感冒症状で医療機関を独歩で受診した数時間後にはショック状態に陥り死に至るような急激に進行するものもある.急性心筋炎が疑われた場合,非常に急速に病状が悪化する可能性を念頭に置き,たとえ受診時は軽症であっても入院として慎重に経過観察するべきである.数時間で後述の補助循環を要するような劇症型に移行する可能性もあることから,補助循環治療も可能な高次医療施設へ転送し,集中治療室で経過観察するか,集中治療室にすぐに移せるような状態で経過観察するほうが望ましい.
急性心筋炎の多くは1〜2週の炎症期を乗り切れば回復期に入り,回復期に心機能がほぼ正常化する場合も少なくない.炎症期には各種不整脈や心収縮力低下が生じるが,その間の血行動態維持が心筋炎患者を救命するためには重要である.急性心不全の治療としてカテコラミンや利尿薬が,房室ブロックなどの徐脈性不整脈には一時ペースメーカーが,心室細動などの頻拍性不整脈には電気的除細動が用いられる.これらで対応困難な心原性ショックに陥った場合には,大動脈内バルーンパンピング(intraaortic balloon pumping;IABP)や経皮的心肺補助装置(percutaneous cardiopulmonary support;PCPS)といった補助循環が必要である.
劇症型心筋炎は古典的には「血行動態の破綻を急激に来し,致死的経過をとる急性心筋炎」と定義されるが,近年補助循環による救命例が数多く報告されるようになり,本邦では「体外補助循環を必要とした重症度を有する心筋炎」と定義されている.したがって本稿では,心筋炎の劇症化をどのように察知し,どのタイミングでどの補助循環をどのように用いるべきかを中心に述べる.
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