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特集 急性心筋炎をめぐる最近の話題
急性心筋炎の予後は良いのか悪いのか
Prognosis of Acute Myocarditis in Real-world Practice
猪又 孝元
1
Takayuki Inomata
1
1北里大学医学部循環器内科学
1Department of Internal Medicine and Cardiology, Kitasato University School of Medicine
pp.199-204
発行日 2015年3月15日
Published Date 2015/3/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1404205652
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そもそも急性心筋炎,劇症型心筋炎とは何か
今から10数年前,John Hopkins病院から「劇症型心筋炎は通常の急性心筋炎(acute myocarditisと呼称)に比して,予後が良好である.」とのMcCarthy(M)報告がなされた(図1a)1).わが国では日本循環器学会(日循)からの心筋炎ガイドライン2)を作成するにあたり,極めて予後不良な劇症型心筋炎にどう立ち向かうかを議論し始めていた矢先だった.わが国での劇症型心筋炎に関する予後の報告を紐解くと,確かに急性期に救命を果たした患者の遠隔期予後は極めて良好である(図1b)3)ことは事実であった.しかし,全国調査によるレジストリーでは急性の死亡率は依然として高く,PCPSを使っても4割近い症例が救命できない4)状況であった.欧米での心筋炎との病態や管理の相違,はたまた,偽データなどとの極論も飛び交い,業界は一時騒然となった.しかし,M論文を熟読すると,原因の一つは劇症型心筋炎の定義の違いに起因すると気付かされる.M論文では,機械的循環補助の導入に至らずとも,5μg/kg/分以上の静注カテコラミンを用いてさえいれば,劇症型と定義された(M基準)1).一方,わが国では,日循ガイドラインでの言及にもあるように,機械的循環補助を用いねば血行動態を保持できない,特に経皮的心肺補助(PCPS)以上のサポートを要した急性心筋炎(J基準)2)とのイメージが定着している.劇症型心筋炎は,「血行動態の破綻を急激に来し,致死的経過をとる急性心筋炎」であるが,必ずしも国際的な統一用語ではなく,その定義すら固定されていない.
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