Japanese
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解説
プロゲステロン製剤の使用経験—「呼吸刺激薬は必要か」(4月号)によせて
Are respiratory stimulants necessary? :our experience in using progestin
巽 浩一郎
1
,
栗山 喬之
1
,
本田 良行
2
Koichiro Tatsumi
1
,
Takayuki Kuriyama
1
,
Yoshiyuki Honda
2
1千葉大学医学部肺癌研究施設内科
2千葉大学医学部第二生理
1Department of Chest Medicine, Institute of Pulmonary Cancer Research, School of Medicine, Chiba University
2Department of Physiology, School of Medicine, Chiba University
pp.1241-1244
発行日 1987年12月15日
Published Date 1987/12/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1404205160
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慢性呼吸器疾患の治療薬の一つとして,呼吸刺激剤は有用であるか否かは意見の分かれるところである。「呼吸と循環」の35巻4号に.呼吸刺激薬は必要か—必要1),不要2),各々の立場からの解説が掲載されている。われわれは,呼吸刺激剤の一つであるプロゲステロン製剤の臨床応用を試みており,その有用性を示唆する所見を得ている。以下にわれわれの本剤を試みるに至った生理学的根拠と臨床成績を述べ大方のご批判を仰ぎたい。
胎児の血液ガス環境は図1に示すように"MountEverest in Utero3)"と称される極端な低酸素状態である。このような条件下で胎児の生命を維持するために,酸素親和性の高いヘモグロビン(HbF)の生成や,赤血球数の増加に加えて,母体の肺胞換気量が約倍増し,胎盤を介するガスの拡散を有利にする適応が図られている。妊娠の末期には,呼吸運動を制約するであろう大きな負荷を腹腔内に保有するにかかわらず,妊婦の呼吸障害は少なく,とくに近年呼吸器疾患の領域で問題となっている夜間の睡眠障害も,出産後よりもかえって少ないことも報告されている4)。以上のような妊娠母体における呼吸の適応は主としてプロゲステロンに由来するとされている5)。
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