Japanese
English
解説
Home Care Ventilation(HCV)の現状と将来
Home care ventilation:the present state and the future
木村 謙太郎
1
Kentaro Kimura
1
1大阪府立羽曳野病院集中治療科
1IRCU, Osaka Prefectural Habikino Hospital
pp.133-138
発行日 1987年2月15日
Published Date 1987/2/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1404205001
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I.はじめに—ある文脈—
昭和60年3月に,健保適用の形で,とにかくにも社会的認知にこぎつけた在宅酸素療法(Home oxygentherapy:以下HOT)の実現1)は,慢性呼吸不全の医療の新しい地平線をさし示す,象徴的な一歩であった。長期持続酸素療法の効果2,3),安全性に関する医学的検証の積重ね,いわゆるQuality of life4〜6)(以下QOL)の観点からする「疾病と障害」を背負う人々の医療のあり方についての反省,患者会,医療器機メーカー,医療費節減策を推進する行政など,さまざまな思惑,主張,根拠が,HOT健保適用に結実した7)のである。さしあたりは,病院外酸素供給に関する費用負担の問題だけが,患者にとって軽減されたに過ぎないにしても。HOT認定あるいは届出医療機関は,今日では全国で900近く,またHOT患者数は4,000名近くに達し,多くの慢性呼吸不全患者が,施設内医療における幽閉生活から開放されつつある意味は大きい。一方で,慢性疾患患者や障書者に対する在宅,地域ケア資源の乏しい日本の現実8)をみると,患者を,必要な施設内医療から安易に追放し,HOTを新しい姥捨山にしてしまう惧れなきにしもあらずである。
HOTの「光と影」を見据えて,施設内医療の側も開かれたあり方に変わらなければならない。
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