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本教室では,従来よりMoritz-Tabora以来の古典的検査法である末梢静脈圧測定法1)を改良し,仰臥位で肘静脈圧(VP)を測るとともに,仰臥位での両下肢交互屈伸運動時に生ずる静脈圧上昇量(ΔVP)を測定している。同時に心係数(CI),肺動脈楔入圧(PAW)をも安静時および両下肢運動中に測定し,CI-VPプロット(縦軸がCI,横軸がVP)およびCI-PAWプロットと,運動時のそれらのシフト(例えばΔCI/ΔVP)から右心ポンプ機能,さらにΔCI/ΔPAWから左心ポンプ機能を推定しようと試みてきた2,3)。その結果の一部として,次のことをみいだしている。すなわちΔVP値をもって左心ポンプ機能を推定しようとする時,その対象症例が第一義的に左心を侵す心疾患の場合,ΔVPが高値(35mmH20以上,N=5)であれば左心機能は全例悪かった。しかし,ΔVPが正常のゆえをもって直ちに.左心機能正常と推定する時.約30%において判定の誤ちを犯す3)。この成績から,我々はΔVP≧35mmH2Oなる値は運動時の左心ポンプ機能劣化を強く示唆する有用な指標と考えている。かつ,第一義的に左心を侵す心疾患の場合にΔVPが高値を示す機序の少なくとも大半は,①神経・体液性の体静脈壁トーヌス重上昇と,②右心ポンプ能力の運動時劣化と考えるべき根拠がある2)。
一方,安静時血漿noradrenaline (NA)は正常者に比しうっ血性心不全患者(大動脈弁疾患,僧帽弁疾患,特発性心筋症,計l0名)において明らかに高く,また運動負荷時のNAの増加分(ΔNA)は,正常者に比し,上記うっ血性心不全患者において高いという4)。このような両者(ΔVPとΔNA,またはNA)間の事実関係から,④左心不全をもたない心疾患患者(呼吸困難にっいては,NYHA class I,IIに限る)における安静時NA,および軽度の運動負荷時NA値,(b)同時にΔVPとΔNAの関係,を知ることを目的として,肘静脈圧(VP)と運動負荷によるその上昇量(ΔVP)の測定に加え,運動負荷前・中・後における血漿catecholamines(noradrenaline,adrenaline)を同時に測定してみた。
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