巻頭言
生体工学と生理学
神谷 瞭
1
1北海道大学応用電気研究所
pp.339
発行日 1981年4月15日
Published Date 1981/4/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1404203745
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昨年の夏に簑島高先生が出版された「数理生理学」を最近拝見し,感銘した。生理学全般に亘る広範な範囲での数理的研究に関するたんねんな集大成と,個々の理論についての深い理解と洞察に接し,正に瞠目する想いであった。簑島先生が,北大の生理学教室を主宰なさるかたわら,現在筆者の所属する応電研の初代所長を兼任され,その整備・発展に御尽力なされた事は良く知られている。既に85歳を越える御高齢に達せられながら,なお難解な数学モデルをるる精述なさる頭脳の若々しさには敬服の意を禁じえない。特に第一章に生体熱力学と題して,KedemとKatchalskyの非可逆性熱力学(irreversible thermodynamics)を示され,生体膜の物質輸送やエネルギー交換等生理学の基本課題を取り扱う上でのその重要性を主張される新鮮な識見には,はるか若輩の筆者などにも,深く共感を覚えさせられた次第である。
さて,このユニークな生理学書に取り扱われた理論的モデルの幾つかは,例えば心臓血管系の血行力学モデル,呼吸の力学モデル,あるいは神経回路網モデルなど,生体工学の中心問題となさってきたものである。
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