巻頭言
心筋梗塞死の防止対策を省みて
福崎 恒
1
1神戸大学第1内科
pp.111
発行日 1979年2月15日
Published Date 1979/2/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1404203310
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虚血性心疾患による死亡率の増加は本邦にとって,もはや対岸の火事ではない。このことは心筋梗塞による死亡者数が過去10年間に約5倍に増加した事実に端的に示されている。心筋梗塞死の防止対策が各国単位の問題ではなく,世界を挙げて挑むべき問題であることは,本年9月東京で開催された第8回世界心臓学会の討議内容からも明白である。本学会に参加した印象も加え,筆者が本症の研究者の一人として近頃感ずるところを以下に述べて巻頭言としたい。
日頃第一線の臨床医の方々と討論する機会をもつときにいつも感ずることは,個々の医師により心筋梗塞症の予後に対する考え方がかなり相違することである。つまり,ある医師は「心筋梗塞は適切な処置をすれば恐れるに足りない」といい,また別の医師は「手のほどこしようがない」という。このこと自体本症の実態を卒直に表現するものといえよう。同じ本症患者でも発症からの時期によりその死亡率は著しく異なるためである。諸家の統計成績によれば,急性期から恢復した本症患者の5年生存率は55〜83%とかなり良好である。
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