特集 心筋の電気生理
Fast channelとSlow channel
有田 真
1
Makoto Arita
1
1九州大学医学部生理学教室
1Dept. of Physiology, Kyushu Univ.
pp.955-963
発行日 1978年10月15日
Published Date 1978/10/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1404203258
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ガラス毛細管微小電極を用い,細胞外液を基準(0mV)として心房筋や心室筋の細胞内電位を記録すると,細胞が興奮していないときには一定の静止電位(−80〜−90mV)を示しているが,心筋に興奮が生じると活動電位(+20〜+30mV)が記録される。このような細胞内の電位変動は,膜のイオン透過性の変化により,細胞内外に存在するイオンがそれぞれの濃度勾配(正確には電気化学的ポテンシャル勾配)に従って,流入あるいは流出した結果である。心筋の電気生理学でしばしば用いられる"channel"という言葉は,このような際に「イオンが膜を横切って移動するための通路」の意味で用いられる。従って(ionic)channelは膜に存在するわけであるが,構造的にその実体が明らかにされているわけではない。しかし電気生理学的手法により,色々な興奮性膜で,Na+,Ca++,K+,Cl-などのイオンに対し比較的選択性の高いいくつかのchannelが存在することは確かめられている1)。心筋膜においても,HodgkinとHuxleyがイカ巨大神経で成功した膜電位固定法(本紙別稿)が導入されて以来約20年が経過したが,この間にそのイオン機構の大綱はほぼ解明された感がある1)。
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