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講座
硬さとコンプライアンス—特に粘弾性体の場合
Hardness and compliance of biological material
沖野 遙
1
Haruka Okino
1
1東海大学医学部生理学教室
1Dept. of Physiology, School of Medicine, Tokai University
pp.197-203
発行日 1976年3月15日
Published Date 1976/3/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1404202874
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I.硬さと硬化
生体組織の変形や変質に伴う硬さの変化を色々なindexで対比評価する時に,そのindex本来の物理学定義から逸脱して言葉の持つニュアンスにのみとらわれて誤用している場合も散見する。このままでは討論や発展の障害になる。まず硬さと硬化の差は質的変化を伴うかどうかにあることに注意を払うべきである。硬さは既知の外力とそれに伴う変形程度の比(弾性率)で示すが,硬さの増大が硬化によるかどうかは等しい外力を再び与えて変形が以前より少なくなったことを知らねばならない。即ち血管の伸縮弾性にほとんど無関与な内膜にアテローム沈着があってatheromatous sclerosisといえるか疑問のある所で中膜に線維化のような変質がなければ血管弾性は失われないはずだと筆者は考える。同一の鉄材に焼き入れすれば鋼鉄になって磁性を帯びやすくなり,また焼きなますと軟鉄になるのは分子構造の熱による配列変化で質的変化に伴う硬さの増大,硬化である。そこで生体組織の場合も組成中で最も硬く配列もそろいやすい線維成分含量の増加でもなければ,内圧が高いだけなどから硬化と判定するのは早計である。そこで今回はこれら硬さを示すindexについて復習する。
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