Japanese
English
綜説
運動選手の心電図
The Electrocardiogram of Athletes
前田 如矢
1
Kazuya Maeda
1
1大阪市立大学医学部第1内科
1Dept. of Int. Med. Osaka City University, Medical School
pp.109-116
発行日 1974年2月15日
Published Date 1974/2/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1404202588
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いわゆるスポーツ心臓(Athletic heart, Sport Herz)といわれる大心臓が,運動選手ことに持続耐久競技の選手に多くみられることがHerxheimer1)により確認され,これは優秀な心機能を表現する生理的な心筋労作性肥大であると解釈され,現在でもこの古典的な概念を支持するものが多い。しかしこの大心臓が運動による生理的適応ですぐれた活動能力を有するものか,過度のトレーニングの結果によりおこった肥大,すなわち心疾患にみられるような病的肥大であるのか,その異同をめぐって多くの論議がなされてきた。とくに最近では,一流運動選手の安静時心電図にみられることのあるST, T異常についても,心筋の器質的変化の存在を完全に否定できる根拠がないために臨床心電図の立場から問題にされている。
既にかなり以前に,Reindell2)3)がRegulative Dila—tation (調節的拡張)なる概念,すなわち"スポーツ心臓は長期間持続する心臓負荷に対する生理的適応で,主として自律神経系の調節による影響である"という考え方を提唱し,一方Boros4)は,スポーツによる心肥大は程度の問題であり,過度の負荷持続による心肥大は必ずしも無害とはいえないとし,またFrank5)もスポーツ心の作業能の増大はみとめるが,過度の場合には生命の予後,生活全体のことを考慮してその危険性を過少評価すべきではないとしている。
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