特集 右心をめぐる諸問題
右心のなりたち—鰓門脈心から肺門脈心へ
三木 成夫
1
1東京芸術大学保健センター
pp.910-911
発行日 1973年10月15日
Published Date 1973/10/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1404202541
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右心成立の経緯を明らかにするため,右の頁に一連のシェーマを並べた。右列(B)には脊椎動物の5億年の歴史に見られる"左右心の分離"の過程が腹側面から,また左列(A)には,この模様が"腸循環のEvolution"の部分現象としてその左側面から,それぞれ地質年代のスケールで描き出されている。これらの1コマ1コマは現存する各種脊椎動物の腸循環の発生経過を系統的に比較してゆくうちにできたもので,われわれは右心の持つひとつのなりたちを,この一連の流れのなかに求める。
循環系はもともと腸管の開通とともに,その付属器官として管の腹壁と背壁に沿って発生したもので,脊椎動物では前者の腹側路が静脈性に,後者の背側路が動脈性にそれぞれ分化を遂げるのであるが,心臓はその腹側の静脈路——背側のAorta dorsalisに対する腸下静脈路Vsb——の途中に形成される。比較発生学から眺めて,心臓が「静脈性」であるといわれるゆえんであろう。
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