Japanese
English
綜説
卵の呼吸
Respiration in the Chicken Embryo
田澤 皓
1
Hiroshi Tazawa
1
1北海道大学応用電気研究所生理部門
1Division of Physiology, Research Institute of Applied Electricity, Hokkaido University
pp.388-396
発行日 1973年5月15日
Published Date 1973/5/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1404202487
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鳥類胚の呼吸に関する研究は古く2),すでに18世紀前半には,フランス人Reaumurが鶏卵を32℃の水に入れ,胚の成長を観察して鶏胚の成長に空気が必要であることを示す実験を行なっている。この問題はその後,多数の生理学者によって取上げられ,1834年にはSchwanが,胚の成長に伴ってCO2が絶えず産生され,排出されていることを示し,1900年代に入ってBohrとHassel—balchによりCO2排泄量とO2摂取量が初めて定量的に測定された。その後,呼吸ガス分析を基にした研究が数多くなされてきている4)9)11)22)31)〜33)35)37)〜39)。
受精した卵のガス交換における特徴の一つは,卵穀が存在することである。卵穀は胚を環境から保護すると同時に物理的な隔壁となっているので,胚は卵穀を介して大気に直接さらされている。したがって,ガス交換は卵穀の内側に存在する交換膜と大気との間で行なわれるので,O2摂取量,CO2排泄量などの呼吸ガスの測定が容易であり,また,簡単に環境条件に変化を与えることもできる。ガス交換は拡散と血流によって行なわれるから,呼吸様式の点からいえば,哺乳動物胎盤で行なわれるガス交換において母体が完全にふ卵器に代替された状態であって,胎盤の一種の簡単化されたモデルと考えられる。
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