特集 心筋梗塞
巻頭言
急性心筋梗塞症の臨床的な問題点から
斎藤 十六
pp.3
発行日 1971年1月15日
Published Date 1971/1/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1404202220
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わが国でもCCUがふえてきたが,アメリカでは,すでにCCUの普及とともに,急性心梗塞の直接死因の内容が変ってきており,不正拍死が減り,心のいわゆるpower-failureによる死亡が増している。急性心梗塞に合併するショック兆候が全開すれば,その生存率はほぼ15%以下であり,しかも,この数字はこの20年間を通じて本質的には不変のままである。ここで思い出されることは,昨年WHOが急性虚血性心疾患の病理解剖について勧告していることである(technical report series,No. 441)。国別,研究集団別にかかわらず,互に比較し合えるデーターの整頓は,この方面の進歩に大切である。文字どおり,power-failureの時点における病理学のデーターが増してくれば,臨床面も大いに進歩するにちがいない。いろいろな困難があるから,実験的研究も必要であろう。この困難は臨床がわにもある。不正拍のモニターなどとはちがった困難である。現在の病態生理からすれば,このさい左室の機械力学を知りたいところであるが,古典力学的に圧・容積の関係までにダイジェストしても,なお心性ショックの現場では,ほとんど測定できない。中枢静脈圧でモニターするとして,心カテーテルを入れたら現在の日本のどこかでは手厳しく批判されるだろう。これが,注入用の静脈確保やペーシング用のカテーテルなら,なぜ,とがめられないのだろう。よい診断によい手当はつきものである。
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